介護をテーマにしたオススメの「漫画」と「小説」 | 介護職の転職ガイド

介護をテーマにしたオススメの「漫画」と「小説」

介護職あるある

介護を題材とした「漫画」や「小説」を集めました。

これから介護・福祉業界に進もうと思っている方や、転職を意識して業界研究(疑似体験)をしたい方にも参考になると思います。

小説などであれば図書館で借りても良いですし、漫画ならまんが喫茶などでも置いていることがありますよ!

最近なら電子書籍でスマホやタブレットで簡単に読むことができますから、気になった作品があれば読んでみてください。

介護をテーマにしたおすすめの漫画

ペコロスシリーズ(映画化もされました!)

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認知症をわずらった家族との共同生活や介護を経験したことのある人なら身に覚えがあるかもしれない。

そこにはもちろん苦しかったり悔しかったりすることもたくさんあるのだけど、でも実はちょっとした笑いやしみじみ感じ入るような瞬間がいくつもあって、ときにはなんだか幸せな気分になることだってある。

そんなことを思い返させてくれる、どこか懐かしくて、ホッとする家族の物語だった。

私の場合は大学生のとき、田舎に住む当時100歳近かった祖母とふたりでひと夏を過ごす経験をした。

祖母は同じ屋根の下に寝泊まりする私の素性を一日に何度となく尋ね、
私が用意する毎回ほとんど同じ手抜き料理を「こんな美味しいものは人生で初めて食べた」と言って嬉しそうにし、夜になって外が暗くなると、帰ってこない夫や娘(亡き祖父と亡き伯母)のことを心配してそわそわし始めるのだった。

この本のなかで好きだったのは、著者の母が、亡くなった夫や若き日の自分と会ったり話したりする場面。

本のなかでなんの違和感もなく描かれるそうしたシーンは、読む人の心にも自然にストンと落ちていくと思う。

夢か現かわからないまま空間や時間をとび越えていく著者の母の姿を見ていると、「ああ、私の祖母も同じように祖父や伯母と会話をしていたんだろうな」と、しごく当たり前のように実感できた。

編集者をしていたという著者の力量はまた、各章の巻末に挟み込まれる文章にも表れている。

ご購入の際には漫画部分だけでなく、家族への深い愛情にあふれた文章も読み飛ばさずに味わうことをお勧めします。

 

49歳 未経験 すっとこ介護はじめました!

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思わぬ拾い物です

子供の頃はマンガ家に憧れるほどのマンガ好きでしたが、大人になってからは、仕事や生活などに役に立つ本ばかりになっていました。

このマンガも、「介護の現場」がわかりやすく書かれていそうで手に取りました。介護職の人も、介護施設に身内を預ける側の人も、誰にとっても他人事ではないテーマです。

普通、リアルな知識をマンガで分かりやすく描いたもの……というと、歴史マンガや世界情勢のマンガなど、そういうマンガを専門に書く人みたいなイメージがあります。

でもそういったマンガ本と一線を画しているのは、この作者が本当に普通の?プロのマンガ家だってこと。

仕事が減ったので介護職につくことにしたという変わり種。(マンガ家もタレントと一緒で、トシとると仕事が減るんですね)いわゆる「タメになるマンガ本」と比べ、絵も可愛いし面白そうです。

寝る前に眠くなるまで読もうと思って読み始めたら……止まらなくなってしまい、とうとう最後まで一気に読んじゃいました。

書いてある内容はかなりハードで、リアルな介護の現場の話です。

マンガ家の仕事が減ってきて焦った経緯から、就活、そしてパートから始めて正社員になり、介護福祉士の資格を取り……。

その間に経験したイロイロなこと。入所してるお年寄りのこと。ひとくくりでジっちゃんバアちゃんに見えても、触れてみると一人ひとり実に個性豊かな人生が背景にあること。そして認知などの症状のシャレにならないスゴさ……個性豊かな同僚たちのこと。

また、この種の施設には何かとつきものな、ちょっとコワいユーレイさんの話から……。さらに、自分の両親が認知症を発症した話まで……

多少の脚色はあるにせよ、ほとんどが事実に即していると思われます。マンガの合間にコラムがあり、介護職に興味のある人には実際に参考になると思います

……と、これだけリアルな内容だと、

うーんそうなんだ~、大変だなあ、でも介護って、感動もあるんだなあ!……とか

とにかく介護の現実のことがわかったな……で終わるんですが……

しかし、この作者のすごいところは、フツーにマンガとして面白い! ってところ。

タメになるマンガのマンガ家さんじゃなくて、本当のプロのマンガ家さんだなって感じ。それもギャクがご専門みたい。「マンガとは面白いもの」、という、プロとしての王道をはずしてないあたり、さすがです

ほとんど壮絶とも言える介護の現場を描いてるのに、バク笑してしまったりホロリとしたり、と、読ませ方を心得ています。多分ただの資料マンガだったらこうはいかない。

もっとドロドロと暗くなっちゃうだけでしょう。というか、感動させることはできても、笑わせることってなかなかできないだろうと思います。

後でもう一回読もう……つうか、続編出たら読みたい!

 

ヘルプマン(全27巻)

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介護福祉士の方からこのマンガのことを聞き、読み始めると、1巻から9巻まで一気に読んでしまいました。

徹底的に介護現場を取材しているので、とても実際的な内容になっています。

たとえば認知症の高齢者が徘徊して脱糞して自ら便まみれになったり、家族と他人の区別がつかなくなり、すっかり別人のようになってしまう高齢者など、実際に、周囲でいらっしゃるので、そうした高齢者の介護などにおける、家族の想像を絶する、気が狂うほどの疲労まで、リアルに描かれています。

そんな、今にも壊れてしまいそうに限界にある方々を助けるのが、ヘルプマンの仕事。

しかしながら、介護福祉士や、ヘルパーさんたちが仕事をする、施設や訪問介護の現場では、常に人手不足で、そこにもあえぎがあります。

また、行政による介護保険のシステムの中で、介護される側とヘルプマンの側とのスケジュールの調整に追われるケアマネージャーの苦闘は、まさに現場の叫びでした。

経済的、人材的、時間的に、あらゆることの調整が必要なのですが、その仕事量のために、じっくりと介護のプランを立てること難しさや、介護保険が足かせになって、必要な時に、必要なだけの介護がスムースに受けられない高齢者が多い現実に、これからさらに増える介護の問題について、考えさせられることになります。

フィリピンなど、他国の事情についても触れられていました。

そんな大変な介護の現場ですが、それでも、相手にしているのは、これまで家族を支えてくれた、国の発展に貢献してくれた、生きている人間なんです。

記憶は薄らいでいても、感情は敏感になっているケースが多いようです。

年老い、介護される側になった高齢者たちに、愛情と敬意をもって接するとき、そこに思わぬ感動が、しばしば生まれるといいます。

離職率の高い、介護の仕事の現場から離れられない人が言うには、高齢者と接していて、満たされる瞬間が必ずあるそうです。

誰もが、自身の親を介護することになる可能性があり、
誰もが、いつか年老いて、介護される側になる可能性があります。

現在すでに、介護をしている方も無数におられます。

そのように、誰もがしっかりと認識しておきたい、そんなことが、いっぱい詰まったマンガでした。

単行本の帯に、家庭科の教科書に採用されました、
と記してあるのを見て、うれしくなりました。

優しさ世代でもある、今の若い人たちにこそ、読んでほしいなと、そう思いました。

どれから読めば・・・と悩むかもしれませんが、1〜3巻ごとにテーマが決まっています。興味があるテーマから手にとって見てもいいかもしれません。

・介護保険制度編(第1巻)
・在宅痴呆介護編(第2巻)
・介護虐待編(第3巻)
・高齢者性問題編(第4巻)
・介護支援専門員編(第5〜7巻)
・ケアギバー編(第8巻)
・介護福祉学生編(第9〜10巻)
・認知症編(第11〜12巻)
・介護職員待遇編(第13〜15巻)
・セカンドライフ編(第16〜17巻)
・成年後見制度編(第18〜20巻)
・震災編(第21巻)
・介護起業編(第22〜24巻)
・認知症予防編(第25巻)
・監査編(第26〜27巻)

 

かあちゃんといっしょ

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主人公の気持ちや行動が、自分の中にある本質みたいなところを突いて、何度も心が震えます。

何でもない日常の出来事が中心で、それがさらに共感でき、内容は分っているのに本当に何度も読み返しています。

シビアな状況でありながらもユーモアもあり、やがて迎える自身の親のことにも前向きに考えることが出来るようになった一冊です。

杉作氏の他の作品もお勧めします。派手さは無いと思いますが、心のひだに響いてきます。

 

親を、どうする?

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コミックなのでさらりと読めます。

介護や親子関係がテーマで、じんわりと温かい涙が出るシーンも満載
実際に当事者になった時には確かにこんな風に感じるのだろうなという描写もとてもリアルでした。

おひとりさま、共働き、シングルマザーのそれぞれの介護シーンに自分の場合をあてはめて、ついつい想像してしまいます。

感動もでき、学びも多く、ほんのり考えるきっかけにもなる素敵な本でした。

 

おひとりさまの遠距離介護けもの道: ハハとムスメのバトルあるある

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スクリーンショット 2016-01-27 17.49.17遠距離介護状態に突入しかけていた私にとって、めくるページめくるページ、「そうそうそうなんだよ」「うちもまったく同じ」「やっぱりねぇ」……という感想が噴き出してくる本

これほど身につまされる本が今まであっただろうか。

戸籍上は親であろうが、所詮は「身内」という名の他人。幻想の家族愛を信じている世間の理不尽な圧力にさらされながら、ムスメ・ムスコは何の因果か親の介護をせざるを得なくなる。

小津安二郎の『東京物語』ではないが、子はすでに親とは違う、自ら選んだ別の人生を歩んでいる。その人生を全てリセットして介護に戻るなどということが、そう簡単にできるわけもない。だからこそ、遠距離介護というけもの道に踏み入らねばならない。

「介護地獄」ともいえそうなそんなぎりぎりの状況を、この本ではマンガという表現手段を採り、ユーモアにくるむ形で、読者にうまく語りかけてくる。

すでに介護真っ最中の人には、サブタイトルの「バトルあるある」がまことに適切な言葉として響いてくるだろう。

そしてただ「身につまされる」だけではなく、見失いがちな自分とその状況を客観的に見つめ直す一つの鏡の役割を、この本は果たしてくれるだろう。

また将来そうなるかもしれないという漠然とした不安を抱えている人には、この本の帯にあるように、「まだ何ひとつ準備のない独身者、必読の書!」ということになるだろう。

著者の実体験(今も続いている)から得られた様々なノウハウは直接的に役に立つし、解説ページの法的・制度的な話もまたわかりやすくまとめられていてありがたい。

親がいる人にもいない人にも、ぜひお勧めしたい本である。

 

歳毒舌系女子、喧嘩を売って生きてます

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介護って、身体介護が身体的に辛いのは誰でも想像出来るけれど、認知症の介護が精神的に相当なダメージを受けるということは、当事者でないとなかなかわかりませんよね。

バニラファッジさんは、認知症の姑さんと身体が動かず要介護5のおばさん(姑さんの妹さん)の二人を介護しています。この本は、その姑さんとの日常を主に描いたものです。

認知症の人とは会話がかみ合わないので、普通の精神状態の人は、かなり、本当に相当に疲れます。バニラファッジさんも、一瞬の間があったりして、どう応えるか迷っている様子が伺えます。

用もないのに嫁をしつこく呼び出して「用事なんかないわよ!あなたの顔が見たいだけよ!それじゃダメなの?!」と当然のように怒る姑に対して「ツンデレにもほどがある」とユーモラスに描きつつ、「マジ勘弁」と思うと正直に書きながら「お義母さん亡き後はこんな言動ばかり思い出して泣くんだろうな」という文章を読んで、泣きそうになりました。

いつか、今のこのお二人を介護する毎日がとても充実していたな~と懐かしく思うかもしれない、とか、バニラファッジさんのお二人を見る目の優しさに、本当になんというか、観音様を見ているかのような気になります。

お姑さんは認知症だけど調子の良い時悪い時の波があり、調子が良いと介護する方も期待してしまうし、その期待に反して姑さんが失敗してしまった時のガッカリ感が、とても共感します。

お姑さんとおばさんは、二人で離れに住んでいて、バニラファッジさん一家がこまめに通っています。朝一番にお姑さんのリハビリパンツを見に行くそうですが、前の夜一人で眠れた姑さんだからもしかして着替えも一人で出来ているんじゃないの?と向かうと、そこらじゅうがベタベタに…。

「参ったなあ」と思いながら黙々と掃除するファッジさん。「トイレがわからないんだったらオムツにしてくれれば良いのに」「失敗したのは嫁がいなかったからだと私のせいにするし」などとイライラすることも正直に書いているけれど、黙々と掃除する内にお姑さんを段々と思いやる気持ちに切り替わって行きます。

お姑さんは排泄物で汚れたまま布団に入って寝てしまいます。気持ち悪くてもそうすることしか出来ないからです。ファッジさんの仕事がまた増えてますよね。それでも「部屋はキレイにしましたよ。お母さんの身体も布団もキレイにしましょうね」とお姑さんを思いやる言葉がかけられるファッジさん、本当にスゴイ人です。

家族に認知症患者がいて、イライラさせられる気持ちはとてもよくわかります。義両親との同居をしていて、段々年を取ったな…と思う度、自分に介護なんて出来るだろうかと不安でした。けれども、ファッジさんも、元々は実のお母さんとあまりにも違うお姑さんをむしろ避けていたそうです。

それでも、こんなに愛情深く介護出来るものなのですね。読んでいると自分が介護されているかのように、感謝の気持ちで一杯になります。

この人は本当にスゴイ人です。コミカルなエッセイなのに、思わず泣かされたりします。

介護だけじゃなく、嫁姑関係で悩む方にも、是非ともおススメします。

 

介護をテーマにしたおすすめの小説

ロスト・ケア(日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作)

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犯人が誰かとか、手段は何かなどより、今の福祉の問題を付いている。

福祉とは二文字とも幸せという意味だが、誰にでも与えられるようにみえて、実は恩恵を受けられる人は行政によって選別されている。

つまり切り捨てられている人がいる。そういう切り捨てられた人達に対してのロストケア。

肯定はもちろんできないが、今もどこかで見捨てられている人がいる。そういう福祉の現実を思い起こすことがてきた。

 

 

赤い指(東野圭吾にしか書き得ない、「家族」の物語)

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家族の崩壊、断絶、老人介護。今は家族みんなが元気で、仕事も順調、子どももすくすく成長しているような我が家では、なんだか他人事のような気がしてしまうが、いや、決して他人事なんかではない。

どこの家庭にも起こりうる、いまや「当たり前」のできごと。何か特別なことがあったわけではなく、日々のちょっとしたひずみの積み重ね・・・それがいつしか、大きな歯車の狂いとなって、家庭を崩壊させてしまう。どこで狂い始めたのか、当事者にはわからないことが恐ろしい。

 事件は小学生の女の子が殺されるところから始まるが、これもまた、子を持つ親としては読んでいて苦しかった。被害者の両親の心情は、彼らの描写そのものよりも、経験浅い松宮刑事の描写から、より伝わってくる。どうしてこんなことが起きるのか?その事件の不条理さにだれもが怒りを感じるだろう。こういう事件は犯人を逮捕しても、虚無感が拭えないに違いない。たいていは”悪戯目的”などという許しがたい理由だからだ。こういった事件そのものも、どうしたら減るんだろうか、そんなことまで考えてしまった。

 今回は、事件そのものの推理よりも、加賀刑事の人の心の奥深くまで見通す洞察力、そして、深い哀れみの情。この人の人間性の奥深さを味わえる作品になっていますね。鋭い推理も好きだけれど、違う側面から加賀刑事の魅力を引き出している本作のようなものも大好きです。「刑事の仕事は、真相を解明すればいいというものではない。いつ、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ。」この台詞に、加賀刑事の人柄がよく現れていると思います。

 東野作品の好きなところは、どんなにつらい話でも、最後は救いがあるところ。どんな罪を犯しても、まだ立ち直る余地があると思わせてくれるところ。現実はそんな甘いものではないのかもしれません。だけど、小説の中くらい、人間捨てたもんじゃない、と思いたいじゃないですか。

 ラストは、加賀刑事がほんとに事件を解決できるのか、このまま不完全燃焼なんてことにならないか、といらぬ心配をしてハラハラしましたが、よかった、気持ちが通じて。母の、父の、息子の。家族それぞれの思いが交錯して、家族の絆の深さ、大切さを考えさせられた1冊でした。

 

明日の記憶

 

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若年性アルツハイマーに罹患した主人公の認知機能が徐々に崩壊していく様子を書いたものだが、医師である私の目からみても細かい描写がリアルであった。

 例えば、大学病院で長谷川式知能スケールを、主人公におこなう医者の描写。医者ならああいった風にやっていくなというのがよく分かる。診断にいたる過程も納得。初期の段階では診断も難しいはずで、そういったところもうまく表現されている。

 また、主人公の書く日記の描写が良い。人格の崩壊が進行していく様子が、微妙に表現されている

 「私の言葉に凝わしげだが・・・」と誤字をさりげなく入れていたり、同じ日に同じ文章を繰り返しているところなぞ、気をつけていないと読み飛ばしてしまいそうである。

 筆者は、本書を執筆前にかなりの取材をしたと聞く。神は細部に宿るではないが、こういった細部をきちんと書いていることで、リアリティと、感動を生んでいるのだと思う。

 

 

恍惚の人

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介護福祉士の過去問に出ていて、当時話題になった本らしく興味がわき購入しました。

久々に読みごたえのある素晴らしい小説にであったと思いました。多少言葉の古さはありましたが、本当に昭和の本なのか…と。

逆に昔も今も介護の大変さは変わらず、結局旦那は奥さんに任せっきりなんだなと。

六十代の方にも貸したら懐かしいと喜んでいました。更に高齢者を敬う気持ちになれました。

 

介護小説 最期の贈り物

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昔なら死んでしまった人間が、生命尊重の道徳によって生き延びさせられている。

その結果、新たな問題を私達日本人は抱える。老人介護がそれらの問題の中の一つだ。多くの真面目で良識ある嫁や主婦は、老人介護に関わってとても苦しむ。

脳天気に近代道徳をふりかざして、介護の不十分さを非難する小姑。老人との過去における軋轢を引き摺って、ひたすら逃げようとする夫。ビジネスライクに関わるだけのヘルパー達。そんな人に囲まれて、自殺願望を抱いてしまう介護をまかされた嫁。果たして、救いはあるのか。

人は支え合って初めて生きてゆける。痴呆の老人に支えられ私は生きる。私に支えられ痴呆の老人は生きる。

二人は支え合って生きる。この古くて新しいメッセージが、救いをもたらすはずだ。著者!のせつない思いが私の胸を打つ。

 

 

介護入門(第131回芥川賞受賞作)

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モブ・ノリオさん『介護入門』は、マリファナ片手に、祖母の自宅介護に熱意を傾ける<俺>の日々がつづられた作品である。

ポップ(というかヒップホップ)で攻撃的な文体で、一見おちゃらけてるのやら、怒ってるのやら、ただ毒づいているだけなのやら判然としないが、自分自身への鬱屈したもどかしさを感じることができる。

「ばあちゃんの世話だけを己の杖として、そこにしがみつくことで生きてきた。それ以外の時間、俺は疲弊した俺の抜け殻を持て余して死んでいる」

介護に生活を捧げることによって、自己の存在価値を確かめていると受け止めたが、この言葉はぐっとくる。生活のほとんどが仕事への依存度が高い勤め人にだってあてはまるのだ。

僕は、年齢的に親の介護の現場に遭遇しているから、本作品に書かれていることを実感できている。先の見えない中で、怒りや諦めや悲しみがくすぶりつづけ、自身の無力さへの落胆と引き換えに、外に対しては厳しさを増していくという現実である。ゆえに、本作品でつづられる、一言一言に首肯したり首を捻ったりできるわけだ。

本作品は、読者を煙に巻くような奔放さを持っている。奔放なだけに、読者の想像力を削いでしまっているように思う。言葉の奔流に惑わされず、奥底にあるものに深く共感(または反感)できるとすると、介護の現場を知っているものになるのではないか。

途中で挿入される<俺>が語る介護入門は、日々の経験から導き出した金言であるのだが、これは読者それぞれが翻訳してみると納得感が高い。

 

スクラップ・アンド・ビルド(第153回芥川賞受賞作)

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結局祖父はボケ老人なのか、それとも全てを見透かしている演技者だったのか・・・?考え直してもよくわかりません。

・以下祖父の不思議な点(ネタバレ

1)自分で野菜をトッピングしたピザを食べる 
2)テレビを見た形跡があり、テレビを理解する能力がある 
3)俊敏な移動 
4)来シーズンの服を整理するミクロな力 
5)5~6kgの曾孫を抱き幸せそうな笑顔 
6)女性スタッフの体を触る性欲の存在 
7)循環器系に作用する最低限度の薬さえ飲めば至って健康体という医師の診察結果 
8)何十回も不調を訴え車で搬送してもらうが、悪いところはなかった 
9)耳が聞こえないというが、悪いところはない
これらのことから、「祖父は健康体であり、ボケ老人ではない」 ということが見えてきます。

また、「健斗はじいちゃんが死んだらどげんするとね?」と聞くシーンからは、無職の孫に「介護をする孝行孫」というポジションを祖父がわざと与え、何もする仕事がないという地獄から無職の孫を開放してあげていたのではないかと思えてきます。今、お前にはじいちゃんを介護する役目があるが、じいちゃんが死んだら介護する役は終わっちゃうんだよ、どうすんの?ということです。

以上のことから、1)急性心不全による急性肺水腫での入院 2)風呂場での溺れ の2つのイベントははわざと祖父が孫に役を与え、振り回すためにやったことではないかと考えます。健康と言われているのに、入院や風呂場で溺れるのはおかしいです。退院したあとも補聴器屋で聴力に問題は無い(仮病?)と言われたり、デイケアでセクハラしています。

また、
1)その後就職が決まり、出立する主人公を祖父は「帰ってこなくていい、自分のことは自分でする」などと言い、互の顔が見えなくなるまで手を振って見送るシーン
2)同世代の自分より優れた成功者を見て、弱った祖父の隣にいることで自尊心を維持できていた事に気づく主人公
この2点からも、祖父は無職の孫のプライドを守るためにボケ老人を演じていたのではないかと思えてきます。
演じていないというなら、孫を振り回し、何十回も虚偽の病院搬送事件を起こしていた祖父が、「帰ってこなくていい」とは言わないでしょう。
そして、就職の決まった孫を心から喜んで送り出す・・・
私は孫と祖父が手を振り別れるシーンで、身を呈してまで健斗の幸せを願う祖父の深い愛に、読んでいて感極まりました。

これらのような見方をすると、主人公の画策していた尊厳死の実現は滑稽な計画です。
祖父の掌の上でジタバタする主人公という話になってしまいます。
私の曲解かもしれませんが、この話は他の方のレビューに書いてあるような単純な話には思えません。
若さと老いの対比とか、介護問題についての問題提起とか、そういうことですか?羽田氏はそういうことを書きたかったのでしょうか。
少なくとも帯にある「要介護老人と無職の孫との息詰まる攻防戦」は、祖父の勝ちと言えるでしょう。
みなさんはどう思いますか。

老いていく祖父と、成長していく孫・・・スクラップ・アンド・ビルド。面白かったです。

※文学とは多くを語らず、読み手の想像に任せる部分が多い、答えのないものです。祖父は本当にボケていて、体が悪く、周囲を振り回し、孫への愛情なんて無く、私の感動は的外れかもしれません。羽田氏が私の感想を読めば、「何言ってんだこいつ?」と思われるかもしれません。

ただ、「こんな読み方をしている奴もいるんだ」と思っていただけたら幸いです。

 

半落ち

 

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非常に評判もよく映画化されてもいるので、とても期待して読みました。

空白の2日間に焦点が当てられていて、謎を解き明かしていくというストーリーに引き込まれました。

ですが、正直ラストは腑に落ちないというか、納得がいかないというか・・・不完全燃焼でした。

ミステリーという枠組みでなく、殺人を通しての人間ドラマといった方がしっくりいくかなと思いました。

以上、介護をテーマにしたオススメの漫画と映画でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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